毎年、調査を行っている教員のICT活用指導力が、昨年度末の調査から一部内容が改訂されました。なお実態調査については、別の記事を参照
今回、気になったのは、ICT活用指導力の項目が改訂されたことで、結果がどのように変化したのかまとめてみました。
改訂内容
今回の改訂について、文部科学省からはリンクのとおり文書が出ています。
(参考)教員のICT活用指導力チェックリストの改訂について (PDF:26KB)
具体的には?
今まで大項目5つだったものが4項目になっています。
項目 | 改定前 | 改定後 |
A | 教材研究・指導の準備・評価などに ICT を活用する能力 | 教材研究・指導の準備・評価・校務などに ICT を活用する能力 |
B | 授業中に ICT を活用して指導する能力 | 授業に ICT を活用して指導する能力 |
C | 児童の ICT 活用を指導する能力 | 児童生徒の ICT 活用を指導する能力 |
D | 情報モラルなどを指導する能力 | 情報活用の基盤となる知識や態度について指導する能力 |
E | 校務に ICT を活用する能力 | - |
A項目 教材研究・指導の準備・評価・校務などに ICT を活用する能力
改訂前項目E「校務に ICT を活用する能力」を項目Aへ統合。
B授業に ICT を活用して指導する能力
改訂前項目Bを整理し、協働学習の要素を反映した質問項目を追加(B-4)
この項目の改訂は、かなり影響すると思いました。
文部科学省の文書のとおり、 協働学習の要素を意識した設問が、用意されました。
「B-4 グループで話し合って考えをまとめたり,協働してレポート・資料・作品などを制作したりするなどの学習の際に,コンピュータやソフトウェアなどを効果的に活用させる。」
実際に回答する教師の皆さんの立場になってみたらどうでしょうか。この項目を「できる!」(!は余計ですが・・・)と言える教師は、今はあまり多くないと思います。
下線部の前までは、「主体的・対話的で深い学び」を実現するためにも必要であるし、授業をデザインする上で必要と思います。
しかし、それをコンピュータやソフトウェア(たぶんアプリも含む)を使ってとなると、かなりハードルが上がる気がします。
更に、この項目の数値を成果目標にしている自治体も多いのではないでしょうか
(成果目標にしている自治体のHPを調べて、載せようかと思っていましたが、意外と目標として位置づけている自治体が少なかったです・・)
C児童生徒の ICT 活用を指導する能力
改訂前項目Cを整理し、基本的な操作技能の必要性、協働学習の要素を反映した質問項目を追加(C-1、C-4)
D 情報活用の基盤となる知識や態度について指導する能力
改訂前項目D「情報モラルなどを指導する能力」を再構成。
速報値
結果の速報値が公表されていますので、比較してみるとやはり、B項目が落ちております。
項目 | 平成29年度数値 (確定値) | 平成30年度数値 (速報値) | 増減 |
A | 84.8 | 86.2 | +1.4 |
B | 76.6 | 69.7 | ▲6.9 |
C | 67.1 | 70.2 | +3.1 |
D | 80.6 | 80.5 | ▲0.1 |
E | 80.2 | - | - |
赤枠に記載のとおり、質問項目が改訂されたので、単純な比較はできないのかもしれません。しかし、改訂の経緯をもう一度、確認してみましょう。
しかながら,現行の調査項目については,ICT 機器の進展に対応できていない,アクティブ・ラーニングの視点に立った授業改善の観点が不足しているといった指摘がなされている。文部科学省においては,統計調査としての継続性にも留意しつつ、これからの教育にふさわしい指標となるよう,調査項目の見直しを進めることが必要である。
平成 28 年 7 月 28 日「2020 年代に向けた教育の情報化関する懇談会」
うーん、継続性にも留意しなければならないのに、この結果の公表の形はどうなんでしょう。
所感
今回の調査項目で、しばらく調査が行われるでしょう。各自治体の成果目標をどのように設定していくか、気になるところです。
あくまでもこの調査は、意識調査であり、今後は客観的に把握できるものが必要ではないのかと感じます。
客観的に把握できるもの≒学習成果の見える化ではないかと考えます。子どもたちの学習成果がリアルタイムで分かるようになれば、より授業の精度もあがるのかなと思います。
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