令和元年12月19日、子供たち一人ひとりに個別最適化され、創造性を育む教育ICT環境の実現に向けて、文部科学大臣を本部長とする「GIGAスクール実現推進本部」を設置されました。
『安心と成長の未来を拓く総合経済対策』(令和元年 12 月 5 日閣議決定)において、「学校における高速大容量のネットワーク環境(校内 LAN)の整備を推進するとともに、特に、義務教育段階において、令和5年度までに、全学年の児童生徒一人ひとりがそれぞれ端末を持ち、十分に 活用できる環境の実現を目指すこととし、事業を実施する地方公共団体に対し、国として継続的に財源を確保し、必要な支援を講ずることとする。あわせて、教育人材や教育内容といったソフト面でも対応を行う。」とされたことを踏まえ、GIGAスクール実現推進本部を設置する。
文部科学省「GIGAスクール実現推進本部の設置について」
公開されている資料を確認していこうと思います。
予算概要
予算 | 項目 | 内容 | 予算額(百万円 |
令和元年度補正 | GIGAスクール構想の実現 | ネットワーク環境(校内LAN)、義務教育段階における一人一台端末の整備 | 231,805 |
令和2年度当初 | 新時代の学びを支える先端技術の活用推進 | 様々な先端技術の効果的な活用方法の整理・普及と、その基盤となるICT環境整備を一層促進する必要があり、そのための実証 | 453 |
GIGAスクールについては、「ネットワーク環境の整備」と「端末の整備」の2本立てになりました。8月末に発表された概算要求に「1人1台の端末整備」が加えられた形になりました。
それぞれの整備にいくらかかるのか試算してみたいと思います。
高速大容量ネットワークの整備
概算要求の金額をベースに考えてみたいと思います。
校種 | 国立 | 公立 | 私立 | 学校数小計 |
小学校 | 69 | 19,432 | 237 | 19,738 |
中学校 | 70 | 9,371 | 781 | 10,222 |
義務教育学校 | 3 | 91 | – | 94 |
高等学校 | 15 | 3,550 | 1,322 | 4,887 |
中等教育学校 | 4 | 32 | 18 | 54 |
特別支援学校 | 45 | 1,087 | 14 | 1,146 |
小計 | 206 | 33,563 | 2,372 | 36,141 |
前回試算した際、1校あたり6,200千円で整備すると想定したため、
- 国立・・・6,200千円×10/10×206校=1,277,200千円
- 公立・・・6,200千円×1/2×33,563校=104,045,300千円
- 私立・・・ 6,200千円×1/2×2,372校=7,353,200千円
- 合計 112,675,700千円 → 112,676百万円
校内のLAN整備イメージ
学校内のどの部分が整備の対象か図が公開されました。
画像右上の「無線APは、全教室で全児童生徒が一斉に使うことを想定し設置する。」との記載があります。無線アクセスポイントが補助の対象になって良かったと思います。
普通教室に情報コンセント(LANのポート)が来ている学校がほとんどとは思いますが、無線アクセスポイントの整備がまだという自治体が多いと思います。
今回の補助事業をうまく活用して、学校内に一斉に無線アクセスポイントが整備されれば良いなと思います。
校内でどこでもインターネット等に接続できる環境が用意できて、初めて1人1台の端末が活用できると思います。
1人1台端末整備
児童生徒に1人1台端末を整備します。こちらのロードマップを見ると、令和2年度は、小学5、6年生、中学1年生の整備としています。プログラミング教育が2020年度から実施されるため、この学年を優先して整備していくと思われます。
学年 | 人数(小・中 + 義務教育学校 + 特別支援学校) |
小学5年生 | 1,080,534 + 4,477 + 12,036※ |
小学6年生 | 1,089,104 + 4,461 + 12,036※ |
中学1年生 | 1,078,676 + 4,640 + 12,036※ |
合計 | 3,298,000 |
※特別支援学校の小学部・中学部は各学年の人数がわかりませんでした。そのため、全在学者数を12学年で割り戻しました。
補助額は、定額45千円としています。
ロードマップに記載の通り、「地方財政措置を活用し、自治体で3クラスに1クラス分の端末を整備」としているため、国庫の補助はあくまでも2/3となります。
- 端末整備・・・45千円×3,298,000人=148,410,000千円
- 148,410,000千円×2/3=98,940,000千円
- 合計 98,940,000千円 → 98,940百万円
各整備の標準仕様
各整備の標準仕様が公開されましたが、まだこれだけだとどこまでが補助の対象なのかわかりませんでした。
特に、なぜ電源キャビネットが学習用端末のメニューではなく校内LAN整備のメニューに入っているのか分かりませんでした。
端末を整備するからキャビネットが必要になるのでは???
校内LAN整備のメニューに入っていると、端末の整備年度とズレが生じるのではないでしょうか・・・
全体額
項目 | 金額(百万円) |
ネットワーク関連補助の補助事業費 ・ネットワークの整備 (おおよそ112,676百万円) ・キャビネットの整備 (?) | 129,600 |
端末の2020年度の補助事業費 ・端末の整備(おおよそ98,940百万円) ・補助金の申請受付事務を行う民間企業への委託料 (?) ・市町村の申請取りまとめを行う都道府県への事務費 (?) | 102,200 |
合計 | 231,800 |
なお、各項目の小計は、『GIGAスクール構想のポイント(教育新聞)』より引用しています。
今後の国の動き
文部科学省だけでなく、経済産業省、総務省が連携して教育ICT環境を整備していくことがこのポンチ絵で示されています。
経済産業省も総務省も関係する事業を実施しています。
過疎地(特に光が通っていないエリア)への5Gの活用とか進むと良いなと思います。
所感
今回の補助事業で「端末」、「通信ネットワーク」のハードを整備して、ソフト面では「デジタル教科書」や「クラウドサービス」などが整備されていくと思われます。
私は、各整備に合わせて、教員の指導力向上も必要と思います。ICTを活用した授業を展開するのは現場である学校にいる先生方になります。先生方が「これは便利だ」「つかってみよう」そうならなければいくら機器を整備しても意味はないと考えます。
「準備がめんどくさい」「肝心なときに使えない」といった昔の電子黒板のようにならないよう、研修やICT支援員による授業のフォローなどを充実してほしいと思います。
- ハード…GIGAスクール事業
- ソフト…デジタル教科書、クラウドサービス、エドテック
- 研修…教育の情報化に関する手引
そして、大切なことは、これら3つを同時に実施しなければならないと考えます。
- ハードだけ整備しても使える先生がいなければ効果がありません。
- 研修だけ実施しても、勤務する学校に使える機器がなければ、研修で学んだことを活かすことはできません。
だからこそ、3つを一体にして実施してほしいと思います。
各自治体の情報教育担当者は、年明け1月から補助金の申請などで業務量が増えるかと思います。ただ、このタイミングを逃すと、他の自治体との差が広がってしまうと思います。
国のこの事業を活用し、各自治体の学校のICT整備が加速することを期待しています。
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