文部科学省から、令和2年度の概算要求が発表されました。
教育の情報化関係でも大きな発表があり、高速・大容量の通信ネットワークを整備する「GIGAスクールネットワーク構想」に375億円が計上されており、気になったため少しまとめてみました。
→平成31年度( 令和元年度 )2月補正で計上され、GIGAスクール実行推進本部が設置されました。
→新型感染症対策の経済対策としてGIGAスクールを加速するためさらなる予算が計上されました。
→最新状況は別の記事でまとめていこうと思います。
(状況の変化が激しすぎてどこまで追えるかわかりませんが、・・・がんばります)
ちなみに、GIGAは、Global and Innovation Gateway for ALLの略みたいです。1ギガバイトとかのギカともかけていると思うけど・・・
概要
「GIGAスクールネットワーク構想の実現」は3年計画とし、1年目にあたる2020年度は国公私立の全学校の3分の1にあたる約1万校を整備。2022年度までの全校整備を目指す。高速・大容量の通信ネットワーク整備にあたっては、2分の1を補助する計画。
遠隔教育をはじめ様々な先端技術の活用や教育ビッグデータの収集・分析など、Society5.0 時代の学びの実現に必要な児童生徒一人一台環境に対応した高速かつ大容量の通信環境の遅れが危機的な状況であることから、全国の小・中学校、高等学校、特別支援学校等の全ての児童生徒が地域の格差なくこれら新時代の学びを享受できるよう、外部から学校内すべての教室までの高速かつ大容量な通信ネットワークの整備を推進する。
令和2年度概算要求主要事項
考察
1校あたりの整備は
日本全国の小中高特すべての学校を3年間で整備するということだが具体的にはいくらで整備していくのでしょうか。
国立、公立、私立をすべて合計すると、36,087校あります。
補助率等が設置者によって異なると思いますので正確な金額は出せませんが、概算で計算してみます。
学校基本調査-令和元年度(速報)結果の概要-より
校種 | 学校数 |
小学校 | 19,738 |
中学校 | 10,222 |
義務教育学校 | 94 |
高等学校 | 4,887 |
特別支援学校 | 1,146 |
- 3年計画で全校に整備するため、1年間で整備する学校は、12,029校(36,087校✕1/3)
- 補助率が1/2となっているので、1年間で整備にかかる経費は、74,946百万円(37,473百万円✕2)
- 単純計算で74,946百万円÷12,029校= 6,230,443.095円
学校によっては教室数、棟数も異なるため、正確な金額を出すことはできませんが、1校あたり約6,230千円で整備すると想定していることが分かります。
整備規模
ポンチ絵を見てみると、「学校内すべての教室まで高速かつ大容量の通信ネットワークの整備を推進」となっているため、おそらく校内に限った整備になると思います。
- ルーター
- ハブ
- LANケーブル
- 無線アクセスポイント
- 1人1台の学習用端末(3クラスに1クラス分は地方財政措置の対象となっているため、対象になるかどうか・・・)→11月28日加筆(記事下部参照)
しかし、多くの自治体の教育ネットワークは、学校から直接インターネットに出るものではなく、データセンター等を経由しています。
校内だけ、高速化しても、データセンターまでの経路が遅いままでは、せっかくの整備も持ち腐れしてしまいます。
おそらく、別事業で SINETの活用も要求していることから、SINETへ直接接続するような仕組みを考えているのではと思われます。
文部科学大臣も記者会見で「高速道路はできているんですけれどもインターやそこから降りる道ができてない状況にありますので、これは各自治体の皆さんにも御努力をいただいて、国も応援をしながらですね、一日も早い整備をしていきたいと思っています。」と述べていることからも、
GIGAスクールとSINETの両面から整備を進めていくと考えられます。
スケジュール
3年間の整備ですべての学校に整備するが、果たして間に合うのかというのも気になるところです。
学校という特殊な環境での整備となるため、授業が行われている学期中は難しいのかなと思います。
猛暑対策で、今年度はエアコンの整備も進みましたが、自治体によっては来年度以降も続くところがあるかと思います。
それらの他の工事と調整しながらの整備になるため、教育委員会や学校は難しい調整が求められると思います。
全国学力・学習状況調査
今回の整備には、 全国学力・学習状況調査の影響もあると思います。
2019年度全国学力・学習状況調査における中学校英語「話すこと」調査についての検証報告書が公表されています。
- 調査を実施した生徒のうち1.6%(1万5,298人)には、回収した音声データの欠損などがありました。
- 今回の「話すこと」調査は、推奨環境に満たないOSの使用やパソコンの台数不足、事前検証ツールが正常に動作しないことなどから、特例的措置として434校の学校が実施しませんでした。
全国学力・学習状況調査をオンラインで実施することなどを目指す文部科学省としては、今年度の課題を解決すべく、通信インフラの整備計画を出したと思います。
所感
今回の通信インフラの整備は、文部科学省が打ち出している「新時代の学びを支える先端技術活用推進方策(最終まとめ)」の実現に向けた目玉政策であると思います。
ここで整備をしていかなければ、諸外国からも遅れをとることになり、国としても急務であると判断したのだと考えられます。
この事業が、まずは、財務省に認められて、各自治体、各学校にとって良い方向に進むことを期待しています。
11月17日 加筆
新しい資料が公開されたので、記事を書きました。もしよろしかったらこちらも参照ください。
11月28日 加筆
1人1台端末に対しても国の予算を充てるといった報道がありました。経済再生諮問会議の内容を受けてと思われます。
今月、GIGAスクールに限らず、教育の情報化に関するニュースが多くありましたので、それらをまとめてみました。もしよろしかったらこちらも参照ください。
12月8日 加筆
12月5日の閣議決定で、「安心と成長の未来を拓く総合経済対策」(p36)が発表されました。
Society 5.0 時代を担う人材投資、子育てしやすい生活環境の整備のカテゴリの中に、GIGAスクールのメニューも用意されました。実際いくら計上されるのでしょうか。気になるところです。
12月19日 加筆
文部科学省のHPにGIGAスクール構想の実現についての資料が公開されました。
詳しい中身は、今後見ていこうと思いますが、整備についての詳細が記載されていました。まだ細かなところまで読み込めていませんが、気になった点です。
- 1人1台端末は5万円程度の価格帯での補助
- 校内LAN整備は1Gbpsが基準
- 校内LANの整備と同時にクラウド環境等の構築
- 都道府県レベルの共同調達
文部科学省の目玉となる政策となったため、今後もこの整備をまとめていきたいと思います。
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